2010年09月11日

投資適性テストのケリー基準による解釈

以前にチャットで出た投資適性テストを見て思い付いた話があるので書いてみます。(なお、数値については説明しやすいように実際にチャットで出た値から変更してあります。)

テスト1:あなたはどちらを選びますか?
(a) 無条件に10万円もらえる
(b) 確率80%で15万円もらえるが、確率20%で何ももらえない

まず、(a)と(b)の期待値を計算すると、(a)は10万円、(b)は12万円なので、「期待値の高い(b)を選ぶ方が投資適性がありそう」という話になっていました。

その後、

テスト2:あなたはどちらを選びますか?
(a) 無条件に1億円もらえる
(b) 確率80%で1億5千万円もらえるが、確率20%で何ももらえない

だとどうだろうという話になって、「期待値は(b)の方が高いけど(a)を選びたくなるよね」という話になっていました。

こうなる理由としては効用理論による説明が一般的なようです。
では、感情を排した理想的な投資家ならば(b)を選ぶのが正解なのでしょうか?

この現象をケリー基準を使って解釈すると、効用とか個人差のある基準を使わなくてもうまく説明できそうと思い付いたので、以下に書いてみます。

まず、ケリー基準が適用しやすいように問題を書き変えてみます。

テスト3:あなたはこの賭けをしますか?
現在の投資資金1000万円に10万円を足した状態だとして、
10万円を賭けると、確率80%で15万円もらえるが、確率20%で掛け金は没収される

これは、現在投資資金を加えた以外はテスト1で(a)ではなく(b)を選びますかということと本質的に同じです。
次に、ケリー基準を計算してみます。(計算方法については、「ケリー基準の復習」参照)

期待利益率 = (0.8*15万 - 10万) / 10万 = 0.2
増加率 = (15万 - 10万) / 10万 = 0.5
投資資金総額に対する賭け金の割合 = 期待利益率 / 増加率 = 40%

となります。
テスト3の投資資金総額は現在の投資資金1000万円に10万円を足した1010万円ですから、投資資金総額に対する賭け金の割合は、

投資資金総額に対する賭け金の割合 = 10万 / (1000万 + 10万) = 0.99% < 40%

なので、ケリー基準的には(b)を選ぶことに全く問題はありません
では、テスト2はどうなるでしょうか?

テスト4:あなたはこの賭けをしますか?
現在の投資資金1000万円に1億円を足した状態だとして、
1億円を賭けると、確率80%で1億5千万円もらえるが、確率20%で掛け金は没収される

ケリー基準の計算はテスト3と同じで、投資資金総額に対する賭け金の割合は40%になります。
テスト4の投資資金総額は1000万円に1億円を足すのですから、投資資金総額に対する賭け金の割合は、

投資資金総額に対する賭け金の割合 = 1億 / (1000万 + 1億) = 90.9% > 40%

なので、ケリー基準的には(b)を選ぶとかなりのオーバートレードになります
ということで、ケリー基準で考えると(b)よりも(a)を選びたくなるのも納得できます

ちなみに、現在の投資資金が1億5千万円として計算すると、

投資資金総額に対する賭け金の割合 = 1億 / (1億5千 + 1億) = 40%

なので、ケリー基準の範囲に収まります
つまり、ケリー基準的には現在の投資資金が1億5千万円以上の人は(b)を選ぶことに抵抗を感じる必要は無いわけですね。

ということで、ケリー基準を使って解釈すると、賭け金が大きくなるとなぜ(a)を選びたくなるかを、効用とか個人差のある基準を使わなくても現在の投資資金量と賭け金の割合でうまく説明できました。(もちろん、効用理論による説明を全面的に否定しているというわけではなく、こういう説明も考えられるよという話です。)

これを元の投資適性テストという意味で考えると、学校で教わったことをそのまま疑わずに期待値が高い(b)を常に選ぶ人よりも、自分の投資資金量によって(a)を選ぶか(b)を選ぶかを変えることができる人の方が投資適性が高いんじゃないかと私は思います。
posted by ガーベージコレクター at 20:41| Comment(4) | TrackBack(0) | 個人的意見 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ガーベジコレクターさん

お疲れ様です。はじめまして。ミミさんのチャットからここに来ました。ケリー基準を初めて知り大変興味深く拝読させて頂きました。ありがとうございました。

この話から、

・証券会社的には、大金持ち一人よりも、複数の小金持ちの方が、投資判断が分散されるのでいい、とか、
・証券会社の出す材料は投資判断を分散させる意味があるのかも、とか
・最初は兼業で優位性のある機会にINするのがいい、とか、
・カジノを潰すには人々から痛くない額をかき集めて1点買いをするといい、とかとか、

いろいろな想像が膨らみました。また、私自身も、先日、少し期待値を下げても確実な道を選びましたので、話の内容が良く分かりました。

ありがとうございました。よい週末をお過ごしください。

とも
Posted by とも at 2010年09月12日 02:21
コメントありがとうございます。

チャットでは経済物理学の高安秀樹さんの話をしたことがありましたね。

今後ともよろしくお願いします。
Posted by ガーベージコレクター at 2010年09月12日 08:12
こんにちは。
私も1億をもらいます。しかも抵抗も感じません。(笑)
何もせずにお金が手に入る、という時点で無意識に期待値を上乗せしてしまっているのかもしれませんね。
Posted by 義経 at 2010年09月12日 09:57
コメントありがとうございます。

この話のポイントは、自分の投資資金量によってどちらを選んだ方がいいかが変わるということなんですよね。
ちなみに、テスト1だと現在の投資資金が15万円だとケリー基準と一致する値になります。

そういえば、このテスト1を子供に出した場合、子供はお小遣いを15万円も持っていないことが多いので、テスト1でも(a)を選ぶ方が投資適性が高いという大人とは逆の結果になるかもしれませんね。
Posted by ガーベージコレクター at 2010年09月12日 19:48
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