2010年04月29日

サブプライム問題での投資銀行の説明責任

ゴールドマンサックス提訴が話題になっていますね。
この提訴とは少し違いますが、以前に書いた記事(NHKスペシャル「マネー資本主義」の金融工学)の後に書こうと思っていたネタを思い出したので書いておきます。(最近更新をサボっていたので。)

投資銀行が金融工学を悪用(金融工学が悪いんじゃなくて使い方が悪いという意味ね)して、こんなふうに投資家の無知につけこんだのでは、というお話です。

話を簡単にするために、サブプライムローン債を以下のようなサイコロを使ったモデルに簡略化して考えてみます。
(1) 1個だけサイコロを振って、そのサイコロで1が出たときには無条件でデフォルトとして全額没収とする。

(2) (1)で1が出なかったらN個のサイコロを同時に振って全部のサイコロで1が出たときだけデフォルトとして全額没収、それ以外は利子付きで償還される。

このモデルは、(1)が住宅価格が下がった場合(1個のサイコロが住宅価格の上下)、(2)が住宅価格の変動が現状のままの場合(N個のサイコロが個々のサブプライムローンがデフォルトするか)をモデル化しています。(要するにサブプライムローンを借りている人は住宅価格が上がることを前提に自分の収入では返せない程高い金利で借りているので、住宅価格が下がったらみんな返せなくなるでしょというモデルです。)

そうすると、全体としてのデフォルト確率Pは、
(1)の分: 1/6
(2)の分: 5/6 × (1/6)^N

を足して、
P = 1/6 + 5/6 × (1/6)^N

になります。
ここで、Nの数(サブプライムローン債を構成するローンの数)を増やせば(2)の分はどんどん小さくできます。しかし、全体のデフォルト確率は(1)の分があるので1/6より小さくはなりません

サブプライムローン債の格付けは、住宅価格の変動は現状のままという前提条件で行っていたようなので、(2)の部分のデフォルト確率しか評価していないんですよね。
そうすると、Nの数を増やせば(2)のデフォルト確率をどんどん減らせるので、AAAの債権を作ることができるわけ。
でも、いくら(2)を減らしても(1)の分があるので、本当の全体としてのデフォルト確率はAAAには全然ならないわけですね。

で、格付けしか見ていない無知な投資家はAAA債権で利率が高いと喜んで買い投資銀行側は手数料をたくさん抜いても買ってくれるということで両者とも儲かる夢のような商品だったと。
(ちなみに、この債権のリスクは(1)の部分にあるので、住宅価格が下落したときにデフォルトする確率が高いほど(1)と(2)の差が大きくなり投資銀行側が抜ける鞘が大きくなるので、プライムローンよりもサブプライムローンの方が美味しかったのです。)

しかし、いざ地価が下がると(1)のリスクが顕在化してデフォルトしてしまったので、夢から醒めたわけです。

それで、投資銀行側の言い訳としては、金融工学によってリスクが見えにくくなっていたから仕方がなかったとか言っているようですが逆なんじゃないですかね。

上記のような金融工学によるモデル化により、(1)の住宅価格が下がった場合のリスクと、(2)の住宅価格の変動が現状のままの場合のリスクが分離されて、かえってリスクが明確になっているのにね。
投資銀行は(1)のリスクが残存しているのが分かっているくせにそれをきちんと説明せずに、(2)のリスクしか評価していない格付けを利用して安全な債権だと勘違いさせて無知な投資家に売っていたわけですよね。
金融工学から得られた結果を正直に説明すれば、
「格付けはAAAですが住宅価格が下がればデフォルトするので、借金してレバレッジをかけて住宅を買っているのと同じ程度にハイリスクで、リターンは投資銀行側がたくさん手数料を抜いているのでミドルリターンの商品ですがいかがでしょうか?」

となりますが、このように正直に説明していたら誰もサブプライムローン債なんか買わなかったでしょう。

まあ、投資銀行の情報隠しは、今叩かれているトヨタなんかとは比較にならないほど悪質だと思います。(通常の商品なら確実にリコールものですね。)
posted by ガーベージコレクター at 20:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 個人的意見 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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