2010年09月19日

リスク資産の複利シミュレーション

リスク資産の複利運用に関するシミュレーションでとても面白いブログがあったので紹介します。(この前に義経さんのブログのコメントで紹介したやつです。)

ファンドの海」というブログの「リスク資産の複利確率」の記事で、金融工学が専門でないブログ主のイーノさんが試行錯誤しながらシミュレーションを完成させていくのが、共感が持ててとても面白いです。
また、リスク資産の複利運用のシミュレーション結果もとても参考になります

特に面白かったのは、リスク資産を複利運用する場合、期待利益率がプラスでもリスクが大きい場合には運用結果がマイナスになる確率が高くなるという点です。(期待値が高いからといって目いっぱい賭けてはダメだと、このブログでもよく書いてますよね。)
これは、複利運用の場合の価格分布は対数正規分布となり、対数正規分布では(最頻値 < 中央値 < 期待値)となるからなんですね。
そして、このことをグラフで分かりやすく示しているのがすばらしいです。(「続、リスクが高まるとリターンを蝕んでいく。試せるグラフをバージョンアップ」では、期待リターンとリスクを入力するとグラフを表示してくれちゃいます。)

さらにコメントも隅々まで読んでみると、私のブログでよく出てくるケリー基準との関係についてもCOLEさんがコメントされていて、ケリー基準は中央値を大きくするにはどうすればよいかという考え方で、リスク資産のリバランスの最適比率を考察したものという意味合いのとを書かれていますね。(こことかこことかのコメント参照)
なるほど、参考になります。

ついでに、義経さんのブログのコメントに書いた話を補足しておきます。
義経さんのシミュレーションで気になったのは、
・原資産は1日経過するごとに0.5%増加あるいは減少する
という部分です。
BS式では原資産価格変動が対数正規分布、対数収益率が正規分布になるモデルなので、0.5%減少と等確率になる増加量は、1/0.995=1.005025・・・なので、0.5%よりも少し大きくなります。(0.5%増加が等確率というのは原資産価格変動が正規分布の考え方ですね。)
これは少しの違いのようですが、シミュレーション回数を増やすと差が大きくなっていきます
減少と増加が同回数の場合を考えると分かりやすいですが、
0.995^n * (1/0.995)^n
はnが大きくなっても1ですが、
0.995^n * 1.005^n
はnが大きくなると0にどんどん近付いてしまいます。
ということで、コメントでは、
「原資産価格の変動を正規分布でモデル化するか対数正規分布でモデル化するかという問題なんじゃないかな」
と書かせていただきました。

それから、義経さんが最初にシミュレーションしようとしていたことをBS式のモデルでやったとすると「ファンドの海」の記事の対数正規分布で連続複利の平均μを0として時間を経過させたものと同じなので、時間が経過するに従って、中央値はそのまま、最頻値は左へ、平均値(=期待値)は右へ動いていくと考えられます。

ということで、リスク資産の複利運用に関するシミュレーションのブログの紹介でした。
posted by ガーベージコレクター at 17:16| Comment(4) | TrackBack(0) | 投資情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月11日

投資適性テストのケリー基準による解釈

以前にチャットで出た投資適性テストを見て思い付いた話があるので書いてみます。(なお、数値については説明しやすいように実際にチャットで出た値から変更してあります。)

テスト1:あなたはどちらを選びますか?
(a) 無条件に10万円もらえる
(b) 確率80%で15万円もらえるが、確率20%で何ももらえない

まず、(a)と(b)の期待値を計算すると、(a)は10万円、(b)は12万円なので、「期待値の高い(b)を選ぶ方が投資適性がありそう」という話になっていました。

その後、

テスト2:あなたはどちらを選びますか?
(a) 無条件に1億円もらえる
(b) 確率80%で1億5千万円もらえるが、確率20%で何ももらえない

だとどうだろうという話になって、「期待値は(b)の方が高いけど(a)を選びたくなるよね」という話になっていました。

こうなる理由としては効用理論による説明が一般的なようです。
では、感情を排した理想的な投資家ならば(b)を選ぶのが正解なのでしょうか?

この現象をケリー基準を使って解釈すると、効用とか個人差のある基準を使わなくてもうまく説明できそうと思い付いたので、以下に書いてみます。

まず、ケリー基準が適用しやすいように問題を書き変えてみます。

テスト3:あなたはこの賭けをしますか?
現在の投資資金1000万円に10万円を足した状態だとして、
10万円を賭けると、確率80%で15万円もらえるが、確率20%で掛け金は没収される

これは、現在投資資金を加えた以外はテスト1で(a)ではなく(b)を選びますかということと本質的に同じです。
次に、ケリー基準を計算してみます。(計算方法については、「ケリー基準の復習」参照)

期待利益率 = (0.8*15万 - 10万) / 10万 = 0.2
増加率 = (15万 - 10万) / 10万 = 0.5
投資資金総額に対する賭け金の割合 = 期待利益率 / 増加率 = 40%

となります。
テスト3の投資資金総額は現在の投資資金1000万円に10万円を足した1010万円ですから、投資資金総額に対する賭け金の割合は、

投資資金総額に対する賭け金の割合 = 10万 / (1000万 + 10万) = 0.99% < 40%

なので、ケリー基準的には(b)を選ぶことに全く問題はありません
では、テスト2はどうなるでしょうか?

テスト4:あなたはこの賭けをしますか?
現在の投資資金1000万円に1億円を足した状態だとして、
1億円を賭けると、確率80%で1億5千万円もらえるが、確率20%で掛け金は没収される

ケリー基準の計算はテスト3と同じで、投資資金総額に対する賭け金の割合は40%になります。
テスト4の投資資金総額は1000万円に1億円を足すのですから、投資資金総額に対する賭け金の割合は、

投資資金総額に対する賭け金の割合 = 1億 / (1000万 + 1億) = 90.9% > 40%

なので、ケリー基準的には(b)を選ぶとかなりのオーバートレードになります
ということで、ケリー基準で考えると(b)よりも(a)を選びたくなるのも納得できます

ちなみに、現在の投資資金が1億5千万円として計算すると、

投資資金総額に対する賭け金の割合 = 1億 / (1億5千 + 1億) = 40%

なので、ケリー基準の範囲に収まります
つまり、ケリー基準的には現在の投資資金が1億5千万円以上の人は(b)を選ぶことに抵抗を感じる必要は無いわけですね。

ということで、ケリー基準を使って解釈すると、賭け金が大きくなるとなぜ(a)を選びたくなるかを、効用とか個人差のある基準を使わなくても現在の投資資金量と賭け金の割合でうまく説明できました。(もちろん、効用理論による説明を全面的に否定しているというわけではなく、こういう説明も考えられるよという話です。)

これを元の投資適性テストという意味で考えると、学校で教わったことをそのまま疑わずに期待値が高い(b)を常に選ぶ人よりも、自分の投資資金量によって(a)を選ぶか(b)を選ぶかを変えることができる人の方が投資適性が高いんじゃないかと私は思います。
posted by ガーベージコレクター at 20:41| Comment(4) | TrackBack(0) | 個人的意見 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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